チタン合金『GUMMETAL(ゴムメタル)』 ③

今回は、ゴムメタルの合金設計はどのようになされたのかをお話ししたいと思います。

ゴムメタルの合金設計とは?

チタン(Ti)-ニオブ(Nb)系合金では、ある組成になると低弾性になるという過去の知見に着目して、弾性率が低くなる組成を、第一原理計算という手法を使って電子論的に予測した上で、高強度化を両立できる成分系を絞り込み、さらに冷間加工プロセスと合わせて開発されたのです。

このようなゴムメタルの合金設計と特異な特性及び特性が発現する変形機構については、2003年の‘Science誌’に論文が掲載されています。論文の中では、ゴムメタルは、それまでの金属材料では常識とされていた‘転位による変形’とは異なるメカニズムで変形し、内部にナノサイズの弾性ひずみ場が形成されることが、特性の発現に関係していると報告されています。この論文は、金属変形の研究者に注目され、その後は世界的に様々な教育機関との共同研究が行われて、多数の論文が発表されています。

 

ゴムメタルの製品化

このようにして、(株)豊田中央研究所で開発されたゴムメタルの応用に、最初に目を付けたのは、(株)豊田中央研究所の株主会社の1社である豊田通商(株)でした。

 

眼鏡フレームへの応用について、豊田通商(株)事業開発部を中心としてゴムメタルの用途開発がスタートしました。

最大の特長である低ヤング率を活かすことが出来る民生品として、最初に眼鏡フレームに着目しました。

開発者も長年めがねを掛けており、眼鏡フレームのどの部分に使われるのが良いか直感的に感じたそうです。

早速、チタン粉末を製造している友人を通じて弊社にゴムメタル線材の提供があり、1999年眼鏡フレーム用として試作がスタートしました。

ゴムメタルの性質が最高に生きる使用部位はフレームの腕(専門用語:テンプル)です。長時間掛けていても痛くならない、掛けていて心地よいテンプルを目標にしました。

粉末焼結材の加工経験が無いため、先ずは溶性材の延長で加工工程を組み、冷間鍛造・圧延の試験を繰り返し行いました。その結果、徐々に加工方法が確立され、2000年4月に量産ができるまでになりました。

ゴムメタルはヤング率が45GPaと低く、弾性範囲が広いので顔幅に関係なくフィットしてめがねが快適に掛けられる眼鏡用フレームの最高級品として扱われるようになりました。

 

次に商品化されたのは、スポーツ用品でした。ゴルフクラブへの当初の応用は、ウッドのフェイスでしたが、開発途中でフェイスの反発係数に上限規制がかかってしまい、ゴムメタル製が規制を超えたため、止む無く中断されました。しかし、その後はシャフトの一部に応用されるようになり、ヨネックス(YONEX)から販売されたナノVは石川遼選手も使用されていました。その他、テニスやバトミントンのラケットなどにも使用されています。

最近の応用商品の中で画期的なのは、歯科矯正ワイヤーです。約4年前から国内で販売が開始され、今では全国の矯正歯科クリニックで使用が拡大しています。その理由は、ゴムメタルの‘しなやかさ’が、歯の移動に最適な力を生み出すため、患者さんの痛みが少なく、治療期間が短くなると言うことです。金属アレルギー元素を含まないというメリットもあります。歯科矯正の患者さんは、日本では20人に1人くらいですが、欧米では5人に1人が、幼い頃から歯科矯正治療を受けており、今年からは、欧米でも販売される予定です。

 

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